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創作まとめ

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リドリメの話(赤かばんの貸本屋の話)

リドリメの話、ですか?
いいですよー、『この世界』に伝わる突然変異のことですよね。

瞳が鮮やかな緑色なのが特徴です。ただ、単純な緑色の目、というわけでもなく月の光をその瞳に当てると、青とも金とも見える不思議な輝きを増すそうですよ。
先天的にロナニハハやノトコの力に抗体があるため、その力も影響しない。
つまり「ロナンの呪い」や「ノトコの恩恵」をうけることもなければ、それらの不思議な力での攻撃も回復も受けないという身体を持っています。

例えばゲームでいう、普通の物理攻撃でダメージは受けるけど、攻撃魔法も回復魔法がきかないって感じ、いわば魔法無力化!みたいなものでしょうか。ああ、わからなければいいです。

『この世界』では希少価値がすごく高くて、めったにいないんですよ。
まぁ、見つかったら、どんなことされるか、わかったもんじゃないですしね。
例えば、抉った瞳を首飾りにして魔除けにしただとか、生け捕りにして血を飲んだとか、肉を削いで食べたとか、骨を粉にして蒔いたとか、剥いだ皮を服飾品にしただとかエトセトラ。
これらはいまだに、どこかの貴族や王族、富豪が今でもやってるみたいですね。

まぁ、リドリメの血肉に力があるのは事実なんですよ。
ロナンの呪いにかかっているひとは、その呪いの部分に縛られるような激痛がはしるといわれています。
その痛みの個所にリドリメが触れるだけで痛みを和らげることができるんですよ。
でもさっぱり取り除くには、やっぱりロナンの末裔がロナニハハの力を吸収するしかないので、気休めにしかなりませんね。

あ、そういえば。
古書によれば、「リドリメを一体食べる」ことでロナニハハもノトコもそのちからを失う、とありますね。
一体、食べる……。カニバリズム的なあれでしょうか。
食べ方は特に記載されていませんでした。


これら全ては、古い書物からの引用です。
今ではもう、私の持ってる完璧な状態では残されていないみたいですね。リドリメか、その親族が、リドリメ自身を守るために消してしまったのでしょう。

申し訳ありませんが、この本はお渡しすることも、複写も禁止されています。
そもそも『この世界』の言語で書かれているので、あなたには読めないと思うのですが……いえ、なんでもないです。
実はこの本は、ちょっとした図書館から預かってるものでして……はい、渡すべき方にお渡ししなくてはいけないんですよ。なので、すみません。
あ、知りたいことあったら聞いてくださいね。私でよければお伝えすることはできますので!
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リドリメの話(町の人々の噂話)

リドリメの話を聞きたいだって?
なんだ、そんなことか。



リドリメは、もはや伝説とか作り話とか言われてる突然変異のことだ。
瞳が鮮やかな緑色なのが特徴だ。
先天的にロナニハハやノトコに抗体があるため、その力も影響しない。
つまりそれぞれの呪いにかかることなければ、その恩恵をうけることもない。
だからこの世界では希少価値が高い。
そりゃそうだ。見つかったら、どんなことされるか、わかったもんじゃないからね。

嘗てロナニハハの力を恐れるある国王や富豪たちが、抉った瞳を首飾りにして魔除けにしただとか、生け捕りにして血を飲んだとか、肉を削いで食べたとか、骨を粉にして蒔いたとか、そんな噂がある。まぁ、聞いての通り良い噂はないな。

リドリメが生まれた時。
ロナンの民の親なら子を隠そうとするだろう。見つかれば殺されるから。
ノトコの民の親なら権力者や王に差し出すだろう。生活が優遇されるから。

特に効果が高いのは体液らしいね。血、唾液、汗、涙、それから……まぁ、あんまり気持ちのいいものではないよね。

これら全ては、あくまで言い伝え、伝聞、噂話の域を出ない。
なぜなら最初に言った通り、リドリメが実在するか分からないから。
ロナニハハの呪いに恐れた者やノトコの幸運に妬んだ者が言い出した幻想かも知れない。
これらの話の大元は、古い書物に書かれてあることだから。しかも今では虫食いだらけのぼろぼろな古本だ。そんなの読む奴は、余程の物好きか、イカれた研究者くらいじゃないか?


そんなのを読んでみたいだなんて、あんたも物好きだな。バカでかい、博物館なら、古書としてあるんじゃないか? ただし、保存状態に保証はできないけれど。

ああ、もしくは。
最近ウワサの"貸本屋"なら、持ってるかもな。砂色の布を纏って、大きな赤い鞄をさげた、ぼさぼさ髪で、白蛇を連れてる変わった奴さ。そいつなら、持ってるかもな。
ただし、そいつがどこに居るかは誰もわからない。でも、出会った奴が望む本は、必ず、絶対、持って居るらしい。それがどんな本であろうとも。
まあ、あくまでウワサだけどね。

【ソラノト】01.はじまり

ソラノト1話目。ながいあらすじのような、下書きのような。
ソラと能登の出会いと、はじまりと。







5月。高校生活に慣れ始めた頃、ソラは日直を終えて帰ろうと、今はもう使われていない、ゴミ置場と化している焼却炉のある裏門へ向かった。正門よりも、そちらから出た方が家まで遠回りにならないことを覚えてから、ソラはしばしばそちらから出ていくことにしている。部活動に励む生徒たちの声を聞きながら、黒い鉄格子がわずかに開けられている裏門を抜けた。しかし、門を出たはずなのに目の前には校舎が見えた。ソラは校内に立っていた。振り返ると裏門はなくただの壁になっていたので、不思議に思いながら再び裏門へ向かう。
しかし先ほどまで居た部活動をする生徒たちの姿は無く、嫌に静かな様子だった。
裏門へ着くと、先ほどとは異なり、鍵がかかっていて出られない。しかたなく正門へ向かうと、こちらもまた門が閉まっている。不審に思いながら校舎内へ入るソラだったが、人の姿も声も無い。やがて職員室にたどり着き、扉を開けた瞬間、黒くて泥々した巨大な化物に遭遇する。
驚き慌てて逃げだすソラ。その後を追うように黒い化物は追ってくる。ソラよりも速い速度で追ってくる化物に怯え、霧中で階段を駆け上がり、屋上の扉を開く。
屋上の端まで逃げたが、扉の前には既に化物が居る。駄目だ、もう逃げられないーーと、思った瞬間、空から白髪の少年が、黒い化物の上からかかと落としをくらわした。
怯む化物に、少年は軽快に殴り蹴り、黒い泥々が次第に小さくなってゆくと、それは人の姿になっていた。
白髪の少年は完全に人の姿をしていた其れを抱え、ソラが入ってきた屋上の入り口を開く。勢い良く風が吹き付けてきた。
少年はその扉の向こうへ人を放り投げて、激しい音と共に扉をしめ、鍵をかけた。
その様子を唖然として眺めているしかなかったソラへ、少年は話しかける。
「お前、どうやってココへ入ってきたんだ?」
「お前、もしかして"扉"なのか?」
「丁度いい!俺は"扉"を探してたんだ!」
お前の名前は?この学校の生徒だな?と質問責めにされ、とっさに答えてしまうソラ。
「うん、わかった。それじゃとりあえず、今日は気を付けて帰れよ」
ソラは気が付いたら校外の裏門の外で立ち尽くしていた。

きっと嫌な夢だったのだ、変な妄想だったのだと自分に言い聞かせて帰宅するが、翌日になり、ソラが登校すると、昨日の少年が教室へ訪ねてきた。

「俺はノト!よろしくな、ソラ!!」