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創作まとめ

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【side_gan】何もかもが崩れゆく荒れ果てた世界で、彼は目を覚ました。

何もかもが崩れゆく荒れ果てた世界で、彼は目を覚ました。

目を開けている感覚はある。しかし本当に自分の目蓋が開かれているのか、もしくは視力を失ってしまったのではないかと不安になる程、そこは闇に覆われていた。
男は身動きも取れない程の狭い空間に、膝を抱えてうずくまっている。暫くして漸く暗闇に目が慣れると、ここが巨大な岩で塞がれた瓦礫の中であることがわかった。

ーー何故、此処に居るのだろう。男は自身が現在に至るまでの記憶を探るが、何一つとして、思い出せなかった。出口の見えない暗闇は、ただ彼の意識を朦朧とさせるだけだった。

再び目を閉じようとした時、微かな音が聞こえた。それは遥か遠くからの小さな音。小石が転がり落ちる音と似ていたが、違う。それは音ではなく、声だ。男に語りかけるように、同じ言葉を繰り返す声。

突然、白く細い糸が現れた。まるで目の前の暗闇が音もなくスルリと切られたような、真っ直ぐの白い線。それは次第に太く広がり、ついには全体を包み込んでいった。
突然の眩しさに目を焼かれたような錯覚に襲われ、咄嗟に右手を額に添え陰を作る。何が起きたのか把握しようと、辛うじて薄く目を開ける。すると、光の奥にひとつの影が見えた。

「ああ、やっと見つけた」

声とともに現れた影から、手が差し伸べられていた。呆けた様子で眺めていると、手はこちらの右手を掴み、無理矢理上へと引きずりあげた。

「やっぱり、きみはこの"世界"に生きていたんだね」

突然のことに僅かな体の痛みを感じながら、男は自分の右手を掴んでいる者を見た。
衣服が所々破れかけ、身体のいたる箇所に痣傷がある、青年だった。
あの暗闇で聴いた声は彼のものだったのだろうか。男はつい先程まで暗闇で反響していた声を思い出そうとした。しかし、その眼下に広がる光景に、全ての思考を掻き消されてしまう。

何もかもか朽ち果てた瓦礫の山。大きくひび割れた地面の上に、崩れ落ちた廃墟が無残な姿を晒している。石造りの柱は只の岩と化し、かつて建造物と呼んでいたであろうものは、最早その役割を成してはいない。灰色の砂埃を纏った、亡骸のような街の姿。
視界を遮るものは無く、その光景は残酷な程に、遥か彼方まで続いていた。

「此処は、一体、」

男が問う言葉すらも詰まらせていると、青年は驚いたように目を見開いていた。握られた手の力が強くなる。

「憶えていないの、」

男は頷いた。青年は続ける。

「それじゃあ、ぼくのことも、」

男は黙って青年を見つめた。青年は、そう、と言って静かに目を伏せた。

記憶が無いことは不本意でありながら、男に罪悪感を与えた。せめて何か些細なきっかけがあれば思い出せるかも知れない。そう思い、青年に名を尋ねると、彼は不意に顔を上に向けた。

「アレ、だよ。ぼくの名前」

2人の頭上は、灰色の雲に覆われている。この"世界"の終焉を宣告するかのような、厚く、重い雲だった。

「雲…?」

男の言葉に、青年の表情はさらに悲しみを増した。今すぐにでも泣き出してしまいそうだ。

「そう。きみは、ぼくを"クモ"と呼ぶんだね」

「それ以外に、何が、」

落ち込むのなら本当の名を教えてくれと男は眉間にしわを寄せるが、口には出さなかった。

「きみが思い出してくれるまで、ぼくはクモだ」

きみに呼んでもらえるなら、何だって構わないよ、青年は微笑んだ。しかしその声には、まだどこか悲しみが含まれていた。

「ぼくを覚えていないなら、きみも、自分の名前を覚えていないんだろう?」

なら、そうだな、ぼくはきみを『ガン』と呼ぶよ。岩の中から出てきたからね。

そう言われて、男は自身が埋もれていた岩の瓦礫の山を見た。足元に暗い穴が開いている。いくつもの岩が重なりあって偶然にできた隙間だ。人1人がうずくまって、ようやく入れる程に狭く小さい。
周囲を見渡せば、いくつも似たような瓦礫の山ばかりだった。その中にからよくこの場所を見つけ、岩を退けられたものだ。

「ねぇ、ガン」

男は、それが自分の新たな名であることに、すぐに気付かなかった。

「きみが、きみを思い出すまで、きみのそばに居させてほしい」

そして青年が、ぼくはね、と呟いて再び男を見る。

「ぼくはこの"世界"の始まりを、きみと歩いた最初の人間だから。この"世界"の終わりを、きみと歩く最後の人間になりたいんだ」


ガンには彼の言葉の意味を理解することができなかった。ただ、ガンは気付いたことがある。
クモは微笑みながらも声が悲しみに満ちていたこと。
そして彼の手が暖かさが、どこか心地良いと感じることだった。

2015.02.27.
2015.03.02修正
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【side_en】花を手に入れた旅人の話

O月X日。

花を、貰いました。


私がいつものように本の館で休んでいると、和服を着た幼い館長代理人がちょこちょことこちらへ歩いてきました。
一見、座敷童のように見える彼は私よりも年下ですが、館長直々に、この館の管理を任せている、結構偉いようなそうでないような役割を担っています。
そんな彼が、私の方へ、何かを持って私の方へ歩いてきました。

「お届けモノダヨ」

相変わらず語尾に違和感のある喋り方で、私に、一輪挿しの細い花瓶を差し出しました。そこにはやはり、細くて可愛い、手のひらほどの白い花が一輪。

「私に?誰が?なんで?」

「サアネ」

「まさか……ムナが!? うっわぁー?!」

「そんなコトするくらいなら舌噛み切って死ヌネ」

そんな軽い冗談を交わしながら手渡された白い花は、透明のガラスの花瓶に入れられて、薄いブルーのリボンでラッピングが施されていました。その姿は、まるで繊細なガラス細工のような、美しい儚さが感じられました。

「きれいなお花ですね…なんていう花なんでしょう」

「名前は無い、みタイヨ」

館長代理は、何やら小さなカードを読んでいました。それは花についての説明が書かれているもののようです。
なんでも、この花に名前は無く、未解明なことの多い謎の花だそうです。しかしながら、通称『旅人の花』とも呼ばれているようで、ある日突然枯れてしまうこともあれば、最長10年は持ったという例もあるのだとか。

「『ガラスのように冷たさと感触だが、非常にもろい』」

「丈夫なのか儚いのか、難しい花ダネ」

持ち主の保存の仕方によって寿命が変わるということでしょうか。私はその白い花を揺らさないよう、大事に両手で瓶を持ち直し、じっと見つめました。花のみならず、葉も茎までも真っ白なその花は、傾けると、光に反射してわずかに煌めいたように見え、その美しさに思わずうっとりしてしまいます。

「不思議な花ですね…」

私は今まで、いくつかのあらゆる『世界』を見てきましたが、このような花を見たことはありません。これは一体、どこに生えているのでしょう。この花の在った『世界』は、どんな所なんでしょう。

「この花をくれた方は、どんな方なんでしょうか……」

「そうダネェ。一言で言うなら……安心感」

「アンシンカン? 安心できるヒトって事です?」

「んー、ヒト、なのカナァ」

彼が『ヒト』という言葉を使うことに躊躇するのを見て、恐らく人間ではないのだな、と感じました。ヒトではないモノが此処へ訪れることはよくあることです。
果たしてこの花をくれた方がどんな方だったのか、私は今まで見てきた世界のヒトではないモノ達の姿を思い出していました。

「クァ? ねえ、裏になんか書かれテルヨ」

館長代理の言葉に、私はそのカードを受け取り、裏を見ました。そこには、花の説明では無い文章が手書きで一言、書かれていました。

「エン、なんて書いてあっッタノ?」

「…………。ムナ」

「クァ?」

「この花をくれた方に、お礼を言わなくてはいけませんね」

私はカードと花を大事に持つと、幾つもの"扉"がある奥へと向かいました。

実を言うと、私はしばらくの間、この館から、"扉"の外へ出ていませんでした。
私が“扉”を開け、外へ出ることが出来なくなってしまっていたのです。
ある日、外へ出ようと"扉"を開けると、向こう側が同じ部屋でした。最初は気にもしませんでしたが、何日経っても何度開けても、同じこの館のまま。この本の館は嫌いではありませんが、さすがに外に出られないのは困りものでした。
館長代理にそのことを話すと「アナタ自身が、此処から出たくないって思ってるからじャナイ?」と言うのですが、外に出たいから"扉"を開けてるのであって、やはり原因はよくわかっていません。
しかし今、この白い花を見ていると、再び外へ出られるのではないかと思えてきたのです。

「旅人には、小さな花が付きものですもんね」

遥か昔から、物語には定番の組み合わせというものがあります。勇者にはドラゴン。魔法少女には不思議生物。
そして旅人には、花。

「そウナノ?」

「そうですよ」

よいしょ、と、お気に入りの赤い鞄に荷物を詰めていると、館長代理がクスクスと含み笑いをしました。

「ヒキコモリ、家を出ル」

「大きなお世話ですよ」

ふと、会えますかね、と独り言のように呟いたら、「アイツよりは、探しやすいと思ウヨ」と彼は言いました。
私の探し求める『あの人』を『アイツ』と呼ぶことが引っかかりましたが、そこは無視して、引き続き旅立つ支度を進めます。

"扉"は、まだ開くでしょうか。私は、この花の在る『世界』へ向かうことができるでしょうか。この花をくれた方に、出会えるでしょうか。

小さな花をたずさえて。

2014/11/28.
 

象徴するもの

ソラは昼の虹。エルは夜の虹。
エンは砂漠と街。ガンは森と廃墟。
澄は暗闇。草八は月。灯は星。
文字でなく、文章もしくは絵で描けたら楽しいだろうな…

【en_to_gan】



*あらすじ

エンという旅人の少女が『扉』を開けてあらゆる『世界』を旅する話。
相棒の白蛇・コーダを連れて、彼女はあらゆる『世界』の出来事を語ります。
けれど彼女自身の物語ではありません。彼女はすべての物語の脇役です。
エンは『ある人』を探しています。
『ある人』は常に旅をしているため、それに追いつこうと探しています。
しかし、彼女は旅を楽しんでいるようなので、
最近はまじめに探しているようにみえないところです。

時折、話の中にはエンによく似た容姿の男・ガンが現れます。
彼はあらゆるものが崩壊し、壊滅した世界の生き残りです。
同じくその世界に生き残った青年・クモに、瓦礫の中から救い出されました。
ガンは、自分が生き残った世界の崩壊の原因がエンであると知り、
エンを追いかけ、捕まえようとしています。



*小話
エン(@en_to_gan)のアカウントにてつぶやいたりしているようです。
ついろぐ:http://twilog.org/en_to_gan

side_en
・【花を手に入れた旅人の話
・【お使いを頼まれた旅人の話
・【道標と再会した旅人の話

【ある小屋で目を覚ました少女の話】

side_gan
・【ある世界で目を覚ました男の話
・『破壊される想世界の中で、ぼくはきみと同じ痛みを共有する
・【森の中へ


*登場人物

・エン

旅人の少女。常に砕けた敬語で話す。
ぼさぼさの茶髪に砂色のポンチョと肩から下げた赤い鞄が特徴。
好物は白米。常におなかをすかせている。

・コーダ

エンのお供の白蛇。淡々としている、第三者のような口調で話す。
「あの人」の使い魔。幻術が使える。

・ガン

エンを追う男。記憶喪失中。
左腕が黒い影に覆われていて、時に恐ろしい化け物の腕になる。
エンと容姿が似ていて、ふとした時に女性にみえなくもない顔立ち、らしい。

・クモ
ガンと共に崩壊する世界に生き残った青年。
ガンを昔から知っているらしく、相当思い入れがある。
クモという名前はガンがそう呼ぶから。本当の名前はガンが思い出すまで教えない。



【ソラノト】

*ざっくりあらすじ
突然異世界の狭間に入ってしまった女子高生ソラちゃんが、
偶然にもそこから助けてもらった能登先輩と、半ば無理やり
一緒に、異世界の狭間に落ちたヒトたちを救うお話。


ただし、私自身好みのストーリー・設定・キャラクターなどなどを全部詰め込んで好き勝手にやってる創作なので、どこか既存の漫画やら小説やらと何か被ってたり既視感あるかと思われるかも知れないけどそのつもりなので好きにやってます。


01.出会いとはじまり(あらすじのようなもの)



*登場人物
・戸宮 ソラ(コミヤ ソラ)
高校1年生の女子。
入学したての頃に能登先輩に出会ってから、いろいろなトラブルに巻き込まれる。
高校進学のため親戚の家に居候中。幼い頃に母を亡くしている。
『扉』の力が特に強い。

・能登先輩(ノト センパイ)
男子。自称ソラと同じ高校の2年生。フルネーム不明。
能天気で無神経。『鍵』。
異世界の狭間に迷い込んだソラを救い、半ば無理やり自分の『扉』にした。
浩成とは仲がよくない。なぜか彼を「ロナ」と呼んでいる。


・色澤 岳(シキザワ タケル)
大学に通う青年。ある時に浩成に助けられて以来、自らの意志で彼の『鍵』となる。
もともと『扉』の素質もあった。浩也至上主義。自称ホモではない。
目つきがとても悪く、常に睨んでいる印象を与えるが、いたって普通の好青年。のはず。


・鈴丘 浩成(スズオカ ヒロナリ)
線が細く、儚げな印象を与える、男。
能登とは昔からの知り合いのようだが、仲が悪い。
本来は『扉』の力が強いが『鍵』の力も持っているため、単独で行動していた。